牛を屠る
★★★☆☆
内容(「BOOK」データベースより)
作家専業となる以前、埼玉の屠畜場に勤めていた日々を綴る。「おめえみたいなヤツの来るところじゃねえ!」と先輩作業員に怒鳴られた入社初日から10年半。ひたすらナイフを研ぎ、牛の皮を剥くなかで見いだした、「働くこと」のおおいなる実感と悦び。仕事に打ち込むことと生きることの普遍的な関わりが、力強く伝わる自伝的エッセイ。平松洋子氏との文庫版オリジナル対談を収録。
本橋成一氏の「屠場」という写真集のページを思い返しながら読んだ。
自分が屠畜場で働く理由を突き詰めて書いたというデビュー作「生活の設計」が新潮新人賞を受賞した際の、「本を書くために働きだしたんじゃない」という本心と「でも本に書いてしまった」という事実の間で揺れる心の描写をはじめ、全編とても好感が持てる文章を書く人であった。