勝五郎の読書雑記

かしわ湯(山愚痴屋諦堂)

今、鑑賞している画集がベラボーに面白い。

「かしわ湯」は電柱に寄生して営業している架空の銭湯である。

脱衣は屋根の上の、角度補正した板の上の籐丸籠に入れ、靴は梯子の上端にある踊り場に置く。体を洗い流す湯は湯船から手桶で汲み出し、湯が減ったら屋根の上の桶から補給する。
もしも湯船の湯がぬるくなったら、電柱から即引き込める電力を利用するはずで、さらにこの電気は小屋根の下にある電球を灯すし、金色の枠を持つ街灯行燈も照らすはずだ。

体を流し終えた湯水と湯船の湯は洗い場隅の排水溝から茶色の塩ビパイプを通って電柱の付け根あたりに排除される。
湯のなくなった浴槽は湯船下部に据え置かれた青いビニールバケツの中に収納された掃除用具でその汚れを落とされるのだろう。

街灯行燈の少し上部に位置する看板は"気のもちよう"を旨とする枕販売店「尾崎枕」の広告である。この看板の上にも小粋な屋根が施されており、その屋根を支える柱は電柱を貫く。もしも尾崎枕で枕を買いたいのなら来た道を引き返せ。

この銭湯の主たる屋根は四つの柱で支えられており、そのうちの三本は原木の姿をそのまま残した材を利用し、残る一本は電柱そのものがその役割を果たしている。
番台がどこにあるかは不明だが、今は確かに営業しており、それは湯船下方にぶる下がっている「わ板」(=湯が沸いた)で確認できる。でも反対側が「ぬ板」(=湯を抜いた)のはずなので、向こうから見た人は営業していないと思うかもしれない。

金色の雲が浮かぶ初夏の町の中空銭湯で、気持ち良さそうに手拭いで背中を洗っている禿た男が私であると空想しているととても楽しい。

『丁字配行形柱』(ていじ くばり ぎょうなりばしら)[一部分]/ 山口晃 2010
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by furomikan | 2013-05-31 21:03 | 銭湯 | Comments(0)