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勝五郎の読書雑記

幸福な生活

百田尚樹 (著)
★★★☆☆
内容紹介
「道子さんを殺したのは、私なのよ――」
認知症が進んでから母はよく喋るようになった。
しかし、その話の大半は出鱈目だ。妻は自分がいつ殺されたのと笑うだろう。
施設を見舞うたびに進行していく症状。子どもの頃に父が家出して以来、女手ひとつで自分と弟を育ててくれた母をぼくは不憫に思えてならない。
久しぶりに訪れた実家の庭でぼくは、むかし大のお気に入りだった人形を見つける。
40年ぶりに手にした懐かしい人形。だが、それはおそろしい過去をよみがえらせた……(「母の記憶」より)。サスペンス、ファンタジー、ホラー……、様々な18話の物語、そのすべての最後の1行が衝撃的な台詞になっているという凝った構成。
『永遠の0』『ボックス!』『錨を上げよ』で話題の百田尚樹は長編だけじゃなかった。星新一、阿刀田高、筒井康隆という名手顔負けの掌編小説集を世に送り出した!

行数を調整して、めくった最後の1ページに最後の一行が来るようになっている。うまいけれど斬新さはなく、ひとつとしてホッとするような話がない。ほぼすべて気が滅入るようなストーリーで18の短編ほぼすべて毎回読み終えて気が滅入る。
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# by furomikan | 2011-07-10 23:59 | 読書雑記

地図は言葉を超える 自転車で走ったヨーロッパ75日

佐藤 博 (著)
★★☆☆☆
内容紹介
オランダ、ベルギー、ドイツ、オーストリー、スイス、フランス、スペイン、自転車で走ったヨーロッパ。道に迷ったら人にたずねる、言葉はわからなくとも、地図があればわかりあえる。走った距離、約4300キロ。知り合いもおらず、言葉も通じない。しかし現地の人の優しさ、温かさにふれた自転車一人旅。「地図は言葉を超える」―75日のロングバケーション。

ヨーロッパを斜にぶった斬るようにオランダから2ヵ月半もかけて自転車旅行をしたことについて書き記した本であればどう転んだとしても面白くならない訳がないのに何という為体。

58歳の著者はどういう経歴の方かは知らないが、自分の年令を棚にあげて随所にオジンやらオバサンやらということばを品のない感じで使い、はたまた青い眼が好きだとか、美人姉妹がどうとか、下着が見えたとか、薄い壁の向こうでの音が聞こえたとか、とにかく感じのよくない文章を書くひとだと思った。

どんな旅でも半年も旅をすれば多くの人との出会いやふれあいがあり、一度くらいは感動的な出来事も起こってあたりまえのような気がするのだが、著者は積極的にいろいろな人との交流を求めることもなく、ただ寂しく巡礼街道をひとりヒタ進んでいるだけで終わっていた。もったいないナ。写真も少なく残念。
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# by furomikan | 2011-07-06 22:40 | 読書雑記

ことばから誤解が生まれる - 「伝わらない日本語」見本帳

飯間 浩明 (著)
★★★★☆
内容紹介
誤解が生まれるのは日本語の運命!? 「辞書もお手上げ!」な誤解のメカニズムを、音声・文法・語義など7テーマに分けて分析・解説

新聞記事やその投書欄などからいろいろなところで見かけた文章をこの著者はサンプルとしてたくさん集めていたのでしょう、「お前は期待の星だ!」は実は「お前は鍛え直しだ!」だったなど、聞き誤りからの誤解だけではなく同音語の取り違えや曖昧な修飾、語義から生まれる誤解、状況から生まれる誤解、表現意図から生まれる誤解など「誤解」をいろいろな角度から分析した本。面白さを説明するのは私には無理だが、わりかし面白かった。

「ことばを使えば必ず誤解が生まれる」という話からの反動として「ことばを発しなければ楽」という流れで、日本人があまり話をしたがらないという章が第6章として立てられていた。
日本ではスーパーなどのレジで店員さんと客は無駄話はもちろん、(店員さんお一方的な形式的挨拶は除いて)挨拶さえしないが、後ろに多くのお客さんが並んでいてもアメリカでは挨拶以外にもいろいろと話をするという話が面白かった。
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# by furomikan | 2011-07-03 10:50 | 読書雑記

友達のアトリエ

鉄の彫刻家をしている友達のアトリエへ新しい自転車で行ってきた。
うちの小5の子どもが入っている地域の軟式野球チームのグランド整備でほぼ毎週土日は早朝からヨットハーバーのある北港などへ出かける。終了後、北港から舞洲~USJ~天保山渡船~なみはや大橋~メガネ橋の下の千本松渡船を利用して西成区へ。
(写真は大正区側の乗り場の壁面。昔は東京の銭湯のペンキ絵にあるような松林の美しい浜だったようだ。)
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いちいち自転車で走った行程を書き記すのは辛気臭いので一気に富田林へ。
(写真はパーフェクトリバティー教団の大平和祈念塔。間近で見ると迫力があった。)
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迷いながらも昼前にやっとそのアトリエに到着。
かつて養鶏場だった敷地に鉄の彫刻が点在している。
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今はとても有名になった俳優の佐々木蔵之介さんも有名になる前に何度か来たことがあるという。
到着したときは奥さんが2人の小さな子供さんに水遊びさせていた。

半年間ほどそのアトリエ(作業場)にコツコツ手をかけてオープンスタジオに仕立て、最近作品の公開を始めた。

宇宙戦艦ヤマトをモチーフにした大作「宇宙戦艦タチバナ」。
3つの筒がついた主砲はどちらも可動式。(鉄梯子で上部中央にある座席に乗り込み、両手・両脚で動かす)
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「ランボルギーニタチバナ」。扉がやはり動く。
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これは新作で2010年の作品。本人の顔面がモチーフ。
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こういう小物も作っている。
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奥の倉庫には展示しきれない作品が仰山眠っている。
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作業場は比較的きれいに整理整頓されていた。
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地面にはびこっている黒い物をかき集め、「これ、食べれんねんで」と言っていたものは、あとで調べると確かに食べようと思えば食べられるものでイシクラゲというそうだ。もちろん食べなかった。
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入口近くにあったこれは学生時代に作ったといっていたので、もう20年以上も前の作品。
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お昼は焼きそばやざるそばなど出してもらい、午後3時頃に美しい奥さんやかわいい子ども達に見送られてアトリエを後にした。

近くに瀧谷不動というお寺があるというので帰りに立ち寄った。
交通安全祈願で有名なところだったので家族の交通安全祈願をする。
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行きしなから右ひざの裏側が引き攣るように痛み、また慣れないサドルで尻も痛かったのでJR三国ヶ丘駅まで走り、輪行して帰った。
サイクルメーターをまだ付けていないので走行距離は測っていないが、帰宅後ルートラボで調べてみると約85kmの走行。
サドルを替えたいなというような話をしたら、学生時代に自転車部だった妻からは「お尻をサドルに合さなアカン!」と手厳しい助言しか返ってこなかった。
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# by furomikan | 2011-07-02 21:02 | 自転車

師匠は針 弟子は糸

古今亭 志ん輔 (著)
★★★★☆

内容説明
「この人の弟子になる!」。高校生の決断はアッという間だった
師匠志ん朝が逝ってはや十年。30年間の師弟関係を描く鎮魂歌!
弟子志ん輔は、今の心境をこう綴る。
〈2001年10月1日、師匠古今亭志ん朝の死はわたしに重く辛くのしかかってきた。ところが、悲しみとは裏腹にわいてきたあの解放感はいったいなんだったのか。師匠への敬愛の強さだけ呪縛もあったのではないだろうか。師匠の死によって「その縛りから解き放たれた」。そう感じたのだろう。師匠への「不遜な思い」への償いは「追善」でしかなかったし、その方法がひたむきに稽古することだった。あれから10年を迎える今、わたしは57歳になった。最近ようやく嘘をつかずに本心を明かしても誰に憚ることのない覚悟が出来たのかも知れない〉

東奔西走、昨年の行動をマメに記録した「ケータイ日記」を併録。
噺家はとにかく忙しい。

今高校生の長男が幼稚園児だった頃にNHK教育テレビの「おかあさんといっしょ」に出ていたのがこの志ん輔さん。息子は「のりもの探検隊」を熱心に見ていた。
テレビに出てはいたが、こぶ平(現林家正蔵)さんなどのようなテレビ芸人っぽさがなく当時から印象がよかった。
高座を初めてみたのは6年ほど前の上野鈴本の夜席トリで、その時に聴いた「幾代餅」は今も心に残っている。(立川流の重~い紺屋高尾よりもサラッと聞かせる古今亭の幾代餅)

その志ん輔さんが師匠古今亭志ん朝などについて綴ったエッセイに、「ケータイ日記」を加えたのが本書。ただ「加えた」と言ってもボリュームではこの「ケータイ日記」の方が主でエッセイは従。
・立ち食いそばの昼食が多い
・モスバーガーやバーガーキングも好き
・昼食は大盛りを頼むことが多い
・電車の乗り継ぎ間違いや乗り過ごしなどが多い
・入門から40年近くたった今でも日々熱心に稽古をしている(ひとりでカラオケボックスで!)
・奥さんと仲良し(でも時々弟子や娘さんのことで口論も)
・娘さんの不登校などの問題を抱えている(抱えていた)
・コーヒーを飛行機の座席でこぼす
・夕立勘五郎をよく高座にのせていた
・チェーホフを読む
など、志ん輔さんの日常が具に描かれていて、ひとりの落語家の「ヨイショ」しない、真摯な日常生活がよく分かった。
平野甲賀さんの装丁がまたいい。
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# by furomikan | 2011-06-26 20:25 | 読書雑記