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勝五郎の読書雑記

月の湯(東京都文京区目白台)

3週間前の物凄く天気のいい日曜日に渋谷駅から歩いて明治神宮に向かった。
代々木公園の南にある競技場あたりからの気持ちのいい緑の中、iPodをシャッフルさせながら歩く。先日、大阪の自宅でiPodを家のパソコンのiTunesに同期させた時、落語をシャッフルから外す設定をし忘れて、何度も出囃子が鳴り出すのでかなん。
飛ばさずに聞いていた談志の提灯屋が終わった頃に明治神宮の本殿前に差し掛かったら、結婚式の新郎新婦があんまり嬉しそうでは無い顔付きで通り過ぎて行った。
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新宿を通り過ぎ、新大久保のコリアンタウンでプルコギ定食を食べて満腹になり、さらに北上する。
途中、徐々にお腹が痛くなってきた。平静な顔つきを保ってトイレを探すが、無い。それらしい雑居オフィスビルを見つけたけど、全体がマンションオフィスなので使えるトイレが無かった。
なおも平静を装って、しかし少しあぶら汗を浮かばせながら歩き、遂に早大理工学部前に2階建てのユニクロを見つけた。買い物客を装い青と赤の人型マークを探す。1階には無い。螺旋階段で2階へ上がるが、何と2階にも無い。一旦あると思ったから、私とは別の、肛門を司る人格も完璧にそのつもりになっているので、俺とその人格の人はかなりの苦境に立った。
少し前かがみの姿勢でユニクロを出て辺りを見回すと今出たばかりのユニクロの建物に、客でなくても使ってもイイよというスタイルのトイレが設えられていた。しかもすごく清潔でウォシュレット付き。柳井さんありがとう!

早稲田での脂汗の一件が片づき、気を取り直して本日の最終目的地である目白台の銭湯へ歩を進める。
写真は都電近くを流れる神田川沿いの桜並木で、春の満開の桜が目に浮かぶよう。
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そして、月の湯に到着。
去年の大地震で屋根などにダメージを受けたが、対応できる職人さんがまだまだ東北地方に掛かりっきりで、こちらまでとても手が回らないという。
営業時間前でまだ暖簾が出ていない。
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男湯入口のスッキリしたデザインの硝子細工。
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入口は引戸ではなく、銭湯では至極珍しい扉。
で、コレもんの手摺り。
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営業時間前のところ、ご主人さんに無理を言って先に入らせてもらい、たくさんの写真を撮った。
まずは女湯から見た番台。
この銭湯は昭和8年(1933年)創業と文京区浴場組合の小冊子に紹介されているけど、昭和3年(1928年)だという説もあるとおかみさんが仰っていた。何れにしても都内に現存する最古の木造銭湯らしい。
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女湯湯の脱衣場。ロッカーに鍵はなく、上の写真に写っている丸籠に脱いだ衣服を入れる。鍵なしは番台だから出来る技。
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浴室への入口もまた洋式の扉。
PULLのPの字の中に「引」の漢字。
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女湯のペンキ絵は徳島県の大歩危。
描いた人は2009年に亡くなった早川利光絵師。
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ペンキ絵の下にはタイル絵の鯉。「お客様、コイ!」
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一方の男湯は富士山。
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見よ、このとんがり様を。
狂い咲きサンダーロードの山田辰夫でさえこんなにトンガってない。
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この銭湯で私が個人的に気に入ったとこのひとつは浴室のこの部分の造り。ありそうで、滅多にない。
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改めて脱衣場で天井を見ると見事な折り上げ格天井が光っており、その下にはオールド広告。
広告社、耳鼻咽喉科、海苔・茶屋、メガネ・時計店、和菓子屋。
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この銭湯の私のもう一つのお気に入りは暖簾。
ここの暖簾は「月の湯」の屋号に合わせて、月の満ち欠けをデザイン化したもので、最近銭湯ファンだけでなく各所で人気があるらしい。作者は大阪の人で、私の友人!

ご主人によると、暖簾の右上に「東京・目白台」の文字があるが東京人からするとこれは全く意外で、東京人の感覚だと「文京区・目白台」となるらしい。・・・そういうものか。

古い建物やペンキ絵、独特な浴室の造りや天井に暖簾。
いいところがたくさんあるこの銭湯の一番いいとこはご主人とおかみさんの優しいおもてなしの心だろう。営業時間前に突然やって来た変なハゲオヤジを胡散臭がりもせずに色々と親切に迎えてくれたことにホンマ感謝です。
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すっかり暗くなるまでこの居心地のいいお風呂屋さんに居着いてしまった。
外に出ると、暖簾のお月さんがきらきらと輝いていた。
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by furomikan | 2012-11-25 23:50 | 銭湯