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勝五郎の読書雑記

日本語教室

井上 ひさし (著)
★★★☆☆

<内容(「BOOK」データベースより)>
井上ひさしが生涯考え続けた、日本と日本語のこと。母語と脳の関係、カタカナ語の弊害、東北弁標準語説、やまとことばの強み、駄洒落の快感…溢れる知識が、縦横無尽に語られる。「日本語とは精神そのもの。一人一人の日本語を磨くことでしか、未来は開かれない」―母校・上智大学で行われた伝説の連続講義を完全再現。日本語を生きるこれからの私たちへ、“やさしく、ふかく、おもしろい”最後の言葉。

印象に残ったのは「スペイン語が国連公用語になった理由」のところに書かれていた第二次世界大戦時のスペインの働きについて。スペインが中立国であったことさえ知らなかったが、そのスペインは敵味方を問わず世界の捕虜収容所や強制収容所で非人道的なことが行われていないか見回り、困っている状況があればそれを手助けすることなどが仕事だったという。

例えばカリフォルニアで強制収容されていた日系人たちが「どうしても納豆を食べたい、作りたい」と思ったら、強制収容所の所長に「スペイン総領事館に連絡を取りたい」とまず伝える。収容所所長は日系人の連絡を取りたいという意思を踏みにじることはできないため、スペイン領事館に連絡をする。それで来たスペイン大使館員に「日本から納豆菌を取り寄せてほしい」と伝えるとスペインという国は必死になって何らかの経路でそれを入手し、収容所に納豆菌を届けたという。

「私は戦争には加わらない。しかしあなた方がどうしても戦争をするというなら、少しでも穏やかに戦争をして欲しいと願う。戦争の中で様々な不幸・不都合が生まれるでしょうから、私たちがそれを引き受けましょう」という立場をスペインは取った。

平易な文章を書くことを常に心がけておられる氏の文章でこどもニュースのようにわかり易く表現してくれるので頭にスーっとくる。(すぐに忘れてしまうけど)日本語についての本でこういうエピソードが出てくるとは思わなかった。
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by furomikan | 2011-04-29 19:55 | 読書雑記